伊藤計劃『<harmony/>』その魅力とは!?(未読者歓迎!!)
これがいつ読まれているかわからない。だからこう言います。おはよう、こんにちは、こんばんは……。
どうもSISU1です。(しすいと呼びます。)冒頭から初めて読む方に全く向けてない感満載の挨拶ですが……。
今回は故”伊藤計劃”氏の書いた小説の一つである"<harmony/>について、読んだことな〜い、って方も原作信者になってしまうほどに魅力的に説明させていただきます。(自信過剰なのってフラグだよね……)
さて、今回紹介する<harmony/>ですが、その前に原作者である伊藤計劃氏についてさらっと、フラットに説明させていただきます。
伊藤計劃(いとうけいかく):1974年生まれ。2009年没。武蔵野美術大学卒。大学時代はマンガ研究会に所属し卒業後はウェブ制作会社に所属するウェブディレクターに。1999年25歳の時短編マンガ『ネイキッド』でアフタヌーン四季賞を受賞するも、その2年後に足に癌が見つかり闘病生活を始める。2007年には処女作『虐殺器官』で作家デビューを果たすも、デビューの数年ほど前から癌が再発。不運にもその2年後に書き上げられた『<harmony/>』が遺作となる。『虐殺器官』『<harmony/>』はSF界で様々な賞を受賞し、SFジャンルにおいて”伊藤計劃以後”という言葉が作られるほどにその影響は大きかった。また、メタルギアソリッドの小島監督の大ファンであり自らを小島原理主義者と言い放つほど。加えて映画鑑賞が趣味であり、シネフィルを自称する。命名の由来は自らの人生を計画する。
こう、経歴を羅列すると彼の存在のミステリアスさが際立ってきませんか?特に”生涯で書き記した小説が二作”とか”SF界に多大な爪痕を残した”とか”自分の人生を計画する”だとか。まあ、一言で言うと存在自体がフィクションのような人物なのです。
では、では前置きはここまでにして、以降よりこの作品について段階を追って魅力的に説明していきます!
(目次って意外と便利よ!)
*<harmony/>って?*
伊藤計劃著作『<harmony/>』は生命至上主義と言う健康、安全、思いやり第一(えっへん!)的な考えが全世界の共通主義として板に着いた近未来の世界を舞台とし、そこに生きる人々の苦悩、生き様を皮肉めいた視点で描いた作品である。
筆者の主観でこの作品像を説明するなら、この作品は幸福の絶対的な答えの一側面について説明した作品であると言える。(根拠は魅力の項にて記述)
*知っておいて損はない用語群*
さて、原作をこれから読むであろう将来有望な読者の卵の卵。つまり、受精卵段階である諸君にはこれから原作を円滑に楽しんでいただくためにある種の円滑剤を用語説明という形でお渡ししたい。(口調の変化には触れないで……)
なぜこんな気遣いが必要なのか、答えは至極簡単である!非常に身も蓋もないがこの作品、架空の名詞が多く、初読の方はプロットを理解する前に本を投げ出してしまう!なんて事態につながってしまうことが非常にまれだがあるのだ!!
現に筆者は友人にこの本を薦めた結果聞かされた感想が名前がごちゃごちゃしててわからない。というなんとも期待外れな感想で三日間の療養生活を余儀なくされた。(ごめん三日は盛った……)
もうそろそろ用語解説の項でこんな下らん身内話を聞かされた、読者の卵の卵。つまりじゅs。読者の方々の不満のボルテージが最高潮に達していることはなんとなく察しがついているので、用語の方を乗させていただく。(ここでwikiリンク貼ったら怒られるかな?)
1.大災禍(ザ・メイルストロム):この作品の舞台である2080年からおおよそ半世紀前、アメリカを中心とする英語圏で起きた大暴動に端を発し世界的に広がった武力闘争の収束からその後までのプロセス。RRWという高性能な核弾頭が中東、アジアをはじめとした各国に流出したことにより世界全面核戦争につながった。一連の戦争が終わったあと、放射線の影響で世界の土地が地獄絵図と化す。この時人々に植え付けられたトラウマが世界が平和、健康に病的なまでに執着する動機となる。
2.生府:政府に変わり市民の健康管理をはじめとする生命主義の理念と密接に関連のある機能を行う医療合意共同体。市民は政府を国内外問わず選べるため、自分の考えに合致する生府を選ぶことができる。なお従来の政府はこの作品において治安維持などの活動を行っている。
3.生命主義:大災禍によって人々が命の大切さを学んだために生まれた主義。この思想は構成員(世界の人々)の体は個人のものでなく全世界共通の資源であるとする。そのため人々は互いを慈しみあい、健康であることに執着する。(つまりあなたの体は私の体。)
4.世界保健機構螺旋監察官事務局:WHOの一部局で主人公たちの所属する組織。世界各地で命を大切にしているかを見張ることを目的としている。いろんな怪しい国を監視しながらそこに行って生命主義わっしょいっていう。
5.WatchMe*超重要(テストに出る!):生府に所属する人々が体に埋め込んでいるナノマシン。成人に成ると同時に起動し体の恒常性を監視し始める。左の鎖骨部にユニットがつけられる。簡単に言えば、血液中や細胞の中にWatchMeが入ることで体で日々発生する悪い細胞、体に入ってくる悪い菌、ウイルスはないかを常に監視できる機械のこと。また運動や食事などの行動が体に与える影響も監視する。ここで監視された情報は生府の持つサーバへと送られWatchMeを埋め込んだ個人に対して警告が行われる。この社会の人々は健康管理をはじめとする生命維持活動のほとんどを外部に委託している。
6.メディケア*超重要(テストに出る!):WatchMeで見つかった悪い菌、ウイルス、細胞などをやっつける薬を生成する機械。箱型をしており、生府から送られてくる薬を作るためのコードを入力することで個人に適した薬を作ることが可能。無論、精神安定剤などの精神的に作用する薬品も作れる。ここで製薬された薬はWachMeの保持者の左肩にあるユニットから体内に送り込まれる。
7.拡張現実(そろそろ用語解説を始めたことに後悔してしまっている自分がいる):目につけるスマホ。他人の個人情報や店の情報そして自分の健康情報などが常にホーム画面に表示されている。
8.インターポール:国際警察
9.次世代ヒト行動特性記述ワーキンググループ:大災禍を経験し、生命主義の基本理念を唱えた生府のトップの老人たちによって作られた組織。大災禍の再発を防ぐことを目的とする。年々その規模は拡大し今や医療機関、学者、WHOの重役たちも所属する。ハーモニープログラムというヒトの意思に関する実験を行っていたらしい。
10.DummyMe:WachMeに嘘の情報を流させるソフトウェア。健康ではないのに健康であると偽れる。
以上がこの作品を楽しむ上で知っておくべき用語群である!!特に赤線を引いた部分はプロットを理解する上で非常に重要なので、ぜひとも頭に入れておいて頂きたい!
*人物紹介*
この作品を楽しむ上で重要な立ち位置をしめる人物たちを説明していきます。
1.霧慧トァン
この作品のヒロインであり、物語の語部(むっつり不適合者)。幼少の頃に父親が生府の設定する倫理セミナーで議論に負ける様子を見て以来この世界の倫理観に不満を持ち始める。表面上は社会に順応してみせるが、心のうちでは自分の体を生府に管理させるという社会のあり方に不満を感じていた。高校時代御冷ミァハというカリスマに出会い社会に対する不満の晴らし方を知る。ミァハとの出会いはトァンのその後の人生に大きな影響をきたし、螺旋監察官事務局上観察官という職にまで上り詰めさせる。
2.御冷ミァハ
当作で重要な立ち位置をしめるキーパーソン(社会不適合者)。幼少の頃から生命主義のあり方に絶望し、あなたの命は世界の命である生命主義への攻撃として何度も自殺を試みる。そして高校時代、友人のトァン、キァンと共に試みた自殺が彼女のみ成功し念願の社会に対する攻撃を果たす。彼女の死は残された二人に”一緒に死ねなかった”という大きな罪悪感を抱かせることに。”誰かのもの”という考えに異常なまでの嫌悪感を示すのは彼女のトラウマとなった暗い過去の影響である。趣味はこの世界ではデッドメディアとされた紙の本での読書であり、彼女の危険な思考は数々の書籍と触れ合う中で培われた。
3.零下堂キアン
トァン、ミァハの友人で三人の中では一番陰が薄い(自称社会不適合者)というかイエスマンというかスポンジ。でもこの相手の言葉にウンウン返すだけのスポンジ気質は彼女なりの深い考えがあってのもの。そしてその考えに全生命主義圏の人々が涙を流すことになったとかならないとか……。
4.霧慧ヌァザ
トァンの親父さん。後述する冴木ケイタと共にWatchMeの元となる論文を書いた。医療分子について研究する学者であったがトァンが15歳の時彼女と母親を残し世界有数の医療都市へと変貌したイラクのバグダットへと研究に向かう。
5.冴木ケイタ
医療分子を研究する大学の教授。ヌァザの恩師であり彼のさらなる研究への欲望を後押しする。
以上が筆者の独断と偏見と不屈の精神力の持続性を元に選び抜いたこの作品を読む前に知っておいたほうがいいキャラたちである!(あのキャラがいない……とかはなしにしようぜ……)
PS:画像はredjuiceさん原案のアニメ映画版のものを使用しております!注意しておきたいのですがこの記事の趣旨はあくまで原作小説未読者へ向けての宣伝なので、アニメ映画については触れません。言い訳としてアニメ映画は単体で取り上げる価値がないとか、あるとか!)
*筆者が考えるこの作品の魅力とは*
ここでは筆者が考えるこの作品の魅力について少々、押し付けがましく説明させていただきます!(ごめん”〜である体”はもう飽きたんだ。)
はい!ではここで皆さんに質問です!!
私が<harmony/>って?の項で明示した主観的な<harmony/>像はなんでしょう??
え、何?覚えていない?!
わかりました。では、もう一度明示させていただきたいと思います!
私ことSisu1はこの作品は”幸福の絶対的な答えの一側面について説明した作品”であると定義します。
なぜかって?
よくぞ聞いてくれました!なぜなら!!!
この作品に描かれている事物は全てこの作品中の幸福論を説明し肯定させるための設定にすぎないからです!!
作品の理論を肯定させるために設定があるなんて当たり前じゃん!って言ったそこのあなた!!そう!!そうなんです!!当たり前!!
……でもね。
その当たり前の描きかたが伊藤氏の想像力と知識力により魔法とも言ってもいいような説得力を帯びているのです!!
そう!!!!
説得力!!!!
出ましたよ!!ついに行き着いちゃったよ彼の、この作品の、彼の文章の魅力の核にに!!!
そうなんです説得力!
これから読むって方の為にオブラートに包んで言いますが、この作品。
読み手の想像力の先を行った事象の設定によりまるで詰め将棋のように思考を一方向へと誘導し説得させられるんです!!!
「幸福って◯◯なんだ……」というように。
読む前の読者の方の中には幸福って苦しいことも含めて幸福じゃん!!て思うかたもおられると思います。
そうです!!その気持ちを絶対に放すことなくこの作品を読みきってください!!
そうしないと……入り込まれます。伊藤計劃に。彼の思考に。彼の言葉に。
はい!
以上が筆者の考えるこの作品の魅力です。わかりましたかね?説得力ですよ!今作の魅力は!!
*魅力的な引用達*
ここでは前項で述べたような魅力的な文章を乗せさせていただきます!
と!その前に!!
伊藤計劃氏の作家性の根底にある文章があるので引用させていただきます。
これがわたし。
わたしというフィクション。
わたしはあなたの身体に宿りたい
あなたの口によってさらに他者に語り継がれたい
(初出「WALK 第57号」2018年12月1日発行*「特集物語の手触り_なぜ物語は求められるのか?」寄稿エッセイ「人という物語」より)
いかかでしょう?この文章。いやらしいでしょ?特に自分の作品を自分自身に形容し身体に宿り込みたいとか……どこの寄生虫だよ!!普通にみんなに愛される作品が作りたいっていえよ!!いちいちカッコいいんだよ!!
でもね、もうわかるでしょ?前項で述べた詰め将棋や誘導って言葉の意味が。
だってほら、私はもう彼の計画の……。
では、話を戻して<harmony/>において筆者が魅力的だと感じた文章をトップ3形式でまとめたので(今思いついた……)ご覧ください。
3位
「大人たちはそれまで分かち難い自然の産物と思ってきた多くのものを外注に出して制御している。〜(中略)私は大人になりたくない。この身体は私のもの。私は私自身の人生を生きたいの。思いやりに慈しむ空気に絞め殺されるんじゃなくてね」-御冷ミァハ-
この文章を選んだ理由はミァハというキャラクターのバックグラウンンどを示唆させるとともに、この世界の抱える矛盾について端的に指摘していることに成功している文章であるからです!
さあ!未読者の皆様!考えてみてください慈しむ空気に殺されるとは一体なんなのかを?
何が? 誰に? どのように?殺されるのかを。
2位
「私はね、
永遠と人々が思っているものに、
不意打ちを与えたい。
止まってしまった時間に、
一撃を食らわせたいの」
-御冷ミァハ-
はい!いただきました見まごうことなき中◯ホイホイ!
そしてそれにまんまとホイホイされたのは私ことSisu1。
とまあ、見てのとおり全開な文なんですが、これも物語をしっかり考えながら読んでいると鳥肌ものな文だと気付くのです!
時間とは一体何を意味しているのか!?
是非とも心の片隅に置きながら読み進めてみてください!!
さあ、お待ちかね第1位!
1位
「WatchMeによって人間は、病を、病を感じることを外注に出した。
人間にとって存在してもいい自然とみなされる領域は、人類の歴史が長引けば長引くほど減ってゆく。
ならば◯を、人間の◯◯を、いじってはならない不可侵の領域とみなす根拠はどこにあるのだろうか?」
うん!誰がなんと言おうと1位です!、1位ったら1位!!
みなさんきっと今頃頭に??が浮かんでいることはなんとなく予想がつきます!まあ確かに。なんの脈絡なくこの文章見せられても「は、はぁ」ってなる程度でしょう!(しかも伏字あるし……)でもねこの文章こそこの作品のロジック(理論)の核に成るものなのです!!さあ考えてみてください一体伏字の中には何が入るのかを!それがこの作品の描く幸福の答えなのです!!
*まとめ(規読者向け+ネタばれてるからね)*
ここまでお付合いただいたみなさん。(絶対いないorz)
本当に有難うございました!拙く、知識の薄さ丸出しな文章でしたがそれでも一人でも多くの方にこの作品の良さが伝わったらいい!という心情の元書かせていただきました!
では、話を変えますが規読者の皆さん。あなた方はこの作品の中にどんなメッセージを受け取りましたか?
ごちゃごちゃと述べてきましたが私はこの作品はミァハの幼少期の陵辱経験が問題の核になっていることから、作品自体が人道的な生き方を空虚なものとして描いていたとしても重要として考えずにはいられないのです!!
みなさんの疑問・感想・批判どしどし受け付けております!!
では!
サヨナラみんな。
劇場版『PSYCHO-PASS 恩讐の彼方に』感想
劇場版『PSYCHO-PASS 恩讐の彼方に』観てきました!!
話の内容的には劇場版第一弾のその後の狡噛を追った話なのですが……
皆さん如何でしたか?
僕個人的には次作への伏線として機能していた作品だと感じました。
物語自体は単調ではなく整合性が取れているのですが、衝撃度については、アニメ第1期を上回るものはなかったという印象です。
今回の作品は副題の恩讐の彼方にという同名の小説のプロットにちなんだストーリー展開がなされており、その小説内で描かれている”憎しみ”という概念をPSYCHO-PASSのみに登場する異質な要素である狡噛が背負い解決する。という形でパロディチックに描かれているところに面白さを感じました。
作画についてはやはりギルクラ、進撃を手がけているIGさんだけ有って粒子チックな光の描写が非常に幻想的だと感じました。
それと車、銃などの機械に躍動感を持たせるような作画、演出も非常にモダンな印象でした。
不満な部分としては僕が感じたのは狡噛、フレデリカをはじめとする公安に関係する人間以外の当て付け感が少し気になったくらいです。(まあ、フレデリカも実は雑賀先生の教え子など当て付けは鼻につきましたが……)
でもそのフレデリカのおかげもあり狡噛が日本で再び日の目を見ることになりそうなので彼女には感謝です!
読者(いれば)の方も恣意的でも良いのでこの作品に対して感じたことがあればコメントしてみてください!議論しましょう!